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新幹線でスマホの通信が途切れるのはなぜか

新幹線に乗るとオンライン会議や動画が途切れるのはなぜでしょうか。電波が届きにくい区間、高速移動による基地局の切り替え、車内の混雑という3つの原因を分けて説明し、乗車中にできる工夫と、「つながらない」を測って可視化する取り組みを紹介します
新幹線に乗ってオンライン会議に出ると、話している途中で声が途切れます。動画は止まり、送ったはずのメッセージに「未送信」の印が付きます。通信事業者のエリアマップでは提供エリアのはずなのに、なぜでしょうか。この記事では、新幹線でスマートフォンの通信が途切れる原因を3つに分けて説明し、乗車中にできる工夫と、「つながらない」を測って可視化する取り組みを紹介します。
「途切れた」の裏には、別々の原因がある
通信が途切れたとき、利用者に見えるのは結果だけです。しかし、その裏で起きていることは1つではありません。大きく分けると、原因は3つあります。
1つめは、電波そのものが届きにくい区間です。トンネル、山間部、基地局から遠い場所では、電波が弱くなります。ただし、トンネルの中は「電波がない」と決まっているわけではありません。トンネル内に電波を引き込む設備(漏洩同軸ケーブルなど)が整備された区間では、トンネルの中でも通信できることがあります。対策の有無は区間ごとに違います。
2つめは、基地局の切り替えです。スマートフォンは移動に合わせて、接続する基地局を次々に切り替えています。これをハンドオーバーと呼びます。時速300km前後で移動する新幹線では、1分間に5km近く進むため、地上で静止しているときより短い間隔で切り替えが起きます。切り替えの瞬間に、通信が一時的に途切れることがあります。
3つめは、混雑です。同じ車両に乗っている多数の端末が、同じ基地局に同時に接続します。電波の強さが十分でも、基地局側の処理が追いつかなければ通信は通りません。混雑した時間帯や区間で「電波の表示は満タンなのにつながらない」と感じるのは、多くの場合この状態です。
電波の強さと、通信のしやすさは別の指標
3つの原因を見分けるうえで、知っておくと役立つ区別があります。電波の強さと、電波の品質は別の指標だということです。
スマートフォンの画面に出るアンテナの本数は、おおむね電波の強さを表しています。技術的には、受信した信号の強さを表すRSRPという値がその元になります。しかし、通信が通るかどうかは強さだけでは決まりません。周囲の雑音や他の電波との干渉に対して、目的の信号がどれだけきれいに受かっているかを表す品質の指標(RSRQやSINR)が悪ければ、強くても通信は不安定になります。
だから、「電波はあるのにつながらない」は矛盾ではありません。強さは足りていて、品質か混雑の側に問題がある状態です。逆に、トンネルで途切れるのは強さそのものが足りない状態です。原因が違えば、次に打てる手も違います。
乗車中にできる工夫
原因を完全に取り除くことは利用者にはできませんが、影響を小さくする工夫はあります。
1つめは、事前の準備です。読む資料や見る動画は、乗車前にダウンロードしておきます。通信が必要な作業と、なくてもできる作業を分けておくだけで、途切れたときの困り方が変わります。
2つめは、通信量を減らすことです。オンライン会議は映像を切って音声だけにすると、必要な通信量が減り、混雑や品質低下の影響を受けにくくなります。
3つめは、再接続の工夫です。基地局の切り替えに失敗して通信が止まったままになったときは、機内モードをいったんオンにしてからオフに戻すと、接続をやり直せることがあります。
4つめは、区間の把握です。トンネルが続く区間や、経験上つながりにくい区間を知っていれば、会議の重要な場面をそこに重ねない、という組み立てができます。この「区間ごとの傾向」は、経験の中にしかない情報でした。次の節で扱うのは、それを測って残す試みです。
「つながらない」を測って、地図にする
通信事業者のエリアマップは、提供エリアの範囲を示す公式の情報です。ただ、走行中の車内から実際にビデオ会議を続けられるか、という問いには答えてくれません。速度測定アプリの結果も、一地点の数値だけでは、なぜそこで途切れたのかがわかりません。
BenriWorksでは、この問いに答えるために、乗車中のAndroid端末で通信状況を記録するアプリ「新幹線つながりマップ測定」を開発しています。設計の中心は、性質の違う2つの層を同じ時刻と位置で記録することです。1つは無線・端末層で、LTEか5Gか、電波の強さと品質、接続しているセルの情報を記録します。もう1つは利用者体感層で、実際にHTTP通信を試みて、成功、失敗、タイムアウト、応答時間を記録します。
2つの層を重ねると、この記事の最初に挙げた3つの原因を、データの上で区別できるようになります。電波の強さが落ちて途切れたのか、強さは十分なのに通信が失敗したのか。位置情報と合わせて路線上に対応付ければ、区間ごとの傾向として地図にできます。

まとめ
新幹線で通信が途切れる原因は、電波が届きにくい区間、高速移動による基地局の切り替え、車内の混雑の3つに分かれます。電波の強さと品質は別の指標なので、「電波はあるのにつながらない」は矛盾ではありません。乗車中は、事前のダウンロード、音声のみの会議、機内モードでの再接続、区間の把握で影響を小さくできます。
電波の強さが距離とともにどう弱くなるかの基礎は、「自由空間伝搬損失の計算」で扱っています。「つながる区間」を測って地図にする取り組みは、検証が進んだ段階でこのサイトに結果を追記していきます。
新幹線つながりマップ測定プロトタイプ
新幹線に乗車中のAndroid端末で、LTE・5Gの電波情報とHTTP通信の可否を記録し、どの区間で通信できたかを路線上に可視化するための測定アプリ。現在開発中で、一般提供はしていません
よくある質問
- トンネルの中では必ず通信が切れますか
- 必ずではありません。トンネルの中に電波を引き込む設備(漏洩同軸ケーブルなど)が整備された区間では、トンネル内でも通信できることがあります。一方で、対策のない区間や長いトンネルでは途切れやすくなります。区間によって違うため、同じ路線でも場所ごとに状況が変わります。
- 電波の表示は十分なのに、なぜつながらないのですか
- 電波の強さと通信のしやすさは別の指標だからです。電波が強くても、同じ基地局に多数の端末が集中して混雑していたり、高速移動で基地局の切り替えに失敗したりすると、通信は通りません。強さだけでなく、品質や混雑の影響を受けます。
- 新幹線では基地局の切り替えがどれくらい頻繁に起きますか
- 路線や区間、通信事業者の基地局の配置によって異なるため、一概には言えません。ただ、時速300km前後で移動すると1分間に5km近く進むため、地上で静止しているときより短い間隔で基地局が切り替わることは確かです。切り替えの瞬間に通信が一時的に途切れることがあります。
- 乗車中に通信を安定させる方法はありますか
- 完全に安定させる方法はありませんが、工夫はできます。必要な資料や動画は乗車前にダウンロードしておく、オンライン会議は映像を切って音声のみにする、途切れたら機内モードのオンオフで再接続を試す、といった方法です。トンネルが続く区間を事前に把握しておくと、会議の進行を組み立てやすくなります。
- 「つながる区間」を調べる方法はありますか
- 通信事業者のエリアマップは提供エリアを示しますが、走行中の車内で実際に通信できるかまでは示しません。BenriWorksでは、乗車中の端末で電波情報と通信の可否を記録し、路線上に対応付けて可視化するAndroidアプリ「新幹線つながりマップ測定」を開発中です。現在は実機での検証前で、一般提供はしていません。

