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自由空間伝搬損失の計算 — 32.45の式の意味と覚え方

夕暮れの窓辺で、グラフを表示したノートPCに向かって無線工学を学ぶ学生。遠くに通信鉄塔が見える

無線工学の頻出計算「自由空間伝搬損失」を、公式の意味から解説します。32.45+20log f+20log d の由来、距離2倍で6dB増える理由、試験での計算のコツをまとめます

一陸技・二陸技の無線工学Bで必ずと言っていいほど出てくるのが、自由空間伝搬損失の計算です。公式を丸暗記して数字を代入するだけでも解けますが、式の意味が分かっていると、暗記が減るうえに応用問題での間違いが減ります。この記事では、よく使われる実用式の由来と、dB計算を速くするコツを解説します。

自由空間伝搬損失とは

送信アンテナから出た電波は、障害物のない空間(自由空間)でも、距離とともに弱くなります。反射も吸収もないのに弱くなるのは、電波のエネルギーが球面状に広がっていくからです。半径が2倍になれば球の表面積は4倍になり、単位面積あたりのエネルギーは1/4になります。

この「広がりによる薄まり」を、送受信アンテナが等方性(すべての方向に均等)だと仮定して損失として表したのが自由空間伝搬損失です。真数では次の形になります。

Γ = (4πd / λ)²

d は距離、λ は波長です。距離が伸びるほど、また波長が短い(周波数が高い)ほど、損失は大きくなります。

送信点から扇形に広がる電波の断面図。距離dと距離2dの位置に球面を表す2本の弧が描かれ、右側では距離dのときの面積を表す小さな正方形と、縦横2倍で面積4倍になった正方形を並べて、表面積が4πd²から16πd²へ4倍になるぶん単位面積あたりのエネルギーが1から1/4へ減ることを示している
半径2倍で球の表面積は4倍。同じ電力が4倍の面積に薄まるので、受け取れる電力は1/4(=損失+6dB)になる

実用式「32.45 + 20log f + 20log d」の由来

試験や実務では、dB表記の実用式が使われます。

L (dB) = 32.45 + 20log₁₀ f (MHz) + 20log₁₀ d (km)

この 32.45 という定数は、魔法の数字ではありません。真数の式 (4πd/λ)² をdBに直し、波長 λ を周波数 f に置き換えて(λ = c/f)、fをMHz、dをkmという実用単位で入れられるように単位換算をまとめた結果が 32.45 です。つまりこの定数には「4πと光速cと単位換算」が全部畳み込まれています。

単位が変われば定数も変わることに注意してください。fをGHz、dをkmで入れる流儀では定数は 92.45 になります。式を覚えるときは「定数・fの単位・dの単位」を必ずセットで覚えます。

実用式 L(dB) = 32.45 + 20log₁₀ f (MHz) + 20log₁₀ d (km) を3つの項に色分けし、32.45は4πと光速cと単位換算が畳み込まれた定数、20log fはλ=c/fで波長を周波数に置き換えた周波数の項、20log dは球面に広がる(4πd)²に対応する距離の項であることを並べて説明した図。最下部にfをGHz・dをkmで入れる流儀では定数が92.45になることが添えられている
式の3つの部品。定数32.45は「4π・光速c・単位換算」の置き場所で、単位が変われば値も変わる

例題: 1000 MHz・10 km

実際に計算してみます。f = 1000 MHz、d = 10 km のとき:

  • 20log₁₀(1000) = 20 × 3 = 60
  • 20log₁₀(10) = 20 × 1 = 20
  • L = 32.45 + 60 + 20 = 112.45 ≒ 112.5 dB

logの計算が10の整数乗になるように出題されることが多いので、log₁₀2 ≒ 0.3 と log₁₀3 ≒ 0.48 を覚えておけば、たいていの数値は暗算圏内です。

「距離2倍で6dB」の感覚を持つ

式の中の 20log という形から、便利な感覚が導けます。

  • 距離が2倍 → 損失 +6dB(20log2 = 20×0.3)
  • 距離が10倍 → 損失 +20dB
  • 周波数が2倍 → 損失 +6dB
周波数1000MHzのときの自由空間伝搬損失を、横軸が距離の対数目盛り、縦軸が損失dBのグラフに描いた図。1kmで92.5dB、10kmで112.5dB、100kmで132.5dBを通る右上がりの直線になり、距離1kmから2kmで+6dB、距離10kmから100kmで+20dBという階段が破線で示されている
対数軸で見ると損失は直線。距離を2倍にした分だけ+6dB、10倍で+20dBと目盛りを読むだけで答えが出る

この感覚があると、「dを3kmから6kmにしたら損失はいくつ増えるか」のような設問に、式を最初から計算し直さずに答えられます。逆に、受信電力の計算で「6dB下がったら電力は1/4」(3dBで半分、6dBで1/4)という換算も頻出です。

wavelaneの無料教材ページ「デシベル」の画面。26dBを10dB+10dB+3dB+3dBに分解する階段グラフが表示され、1倍から10倍・100倍・200倍・400倍へと段を上がっていく様子と、26dB = 10 + 10 + 3 + 3 → 10×10×2×2 = 400倍 という式が描かれている
「dBは足し算、真数は掛け算」を階段で見せた例(wavelaneの無料教材ページより)。10と3の組み合わせでたいていのdBは分解できる

注意: 「自由空間」は仮定である

この式は、障害物も大地の反射もない理想空間の話です。実際の伝搬では、大地反射波との干渉(2波モデル)、山などによる回折(ナイフエッジ)、降雨減衰などが加わり、自由空間損失は「最も条件が良い場合の下限」として使われます。試験でも、自由空間損失を求めさせたうえで、反射や回折の補正を加える問題へ発展していきます。

動かして理解する

「距離を対数軸にすると損失のカーブが直線になる」——文章で読むより、スライダーを動かして見るほうが一瞬で伝わります。

BenriWorksの学習アプリ「wavelane」では、周波数と距離をスライダーで動かすと、グラフ・途中式・損失値が同時に変わる形で自由空間伝搬損失を体験できます。この記事の例題(1000 MHz・10 km → 112.5 dB)もそのまま再現できます。2波モデルやナイフエッジ回折など、発展分野の教材と36パターンの計算演習も収録しています。

wavelaneの自由空間伝搬損失シミュレータの画面。周波数1000MHz・距離10kmのスライダー設定で、損失112.5dBと直前の値からの変化+6.0dBが表示され、途中式 32.45 + 20log₁₀(1000) + 20log₁₀(10) = 112.5 dB と、対数軸の距離減衰カーブ上に現在値のマーカーが並んでいる
記事の例題を再現したところ。距離を5kmから10kmへ2倍にしたので、右上の変化量が+6.0dBと出ている
案内役のイラスト。作業シャツ姿の女性エンジニアが指を立てて式の意味を説明している。左に「32.45の式は何を表す? 自由空間伝搬損失の意味と覚え方」というキャッチコピーが入っている
32.45は魔法の数字ではなく、単位換算まで畳み込んだ定数です

まとめ

  • 自由空間損失は「電波が球面状に広がって薄まる」ことのdB表現。真数では (4πd/λ)²
  • 32.45 は単位換算まで畳み込んだ定数。定数と単位(MHz・km)はセットで覚える
  • 距離2倍で+6dB、10倍で+20dB。dB暗算の最小セット(3dB=2倍)を身につける
  • 実環境では反射・回折が加わる。自由空間は「理想条件の下限」
  • 手を動かすならwavelane

よくある質問

自由空間伝搬損失とは何ですか
障害物のない空間でも、電波のエネルギーが球面状に広がって薄まることによる損失です。半径が2倍になれば球の表面積は4倍になり、単位面積あたりのエネルギーは1/4になります。真数では (4πd / λ)² の形で表されます。
32.45という定数は何ですか
真数の式 (4πd/λ)² をdBに直し、波長を周波数に置き換えたうえで、周波数をMHz、距離をkmという実用単位で入れられるように単位換算をまとめた結果です。4πと光速cと単位換算が、この定数に畳み込まれています。
定数が92.45になることがあるのはなぜですか
単位が変われば定数も変わるためです。周波数をGHz、距離をkmで入れる流儀では定数は92.45になります。式を覚えるときは、定数・周波数の単位・距離の単位を必ずセットで覚えてください。
距離が2倍になると損失はどれだけ増えますか
約6dB増えます(20log2 = 20×0.3)。距離が10倍なら+20dB、周波数が2倍でも+6dBです。受信電力の側では、3dBで半分、6dBで1/4という換算が頻出です。
実際の伝搬でも、この式のとおりになりますか
なりません。この式は障害物も大地の反射もない理想空間の話です。実際の伝搬では大地反射波との干渉、山などによる回折、降雨減衰などが加わるため、自由空間損失は最も条件が良い場合の下限として使われます。

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