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ガイド公開日

自由空間の式が効かなくなる3つの場面

自室の机で参考書と計算用紙を広げ、電波伝搬の問題に取り組んでいる日本人の受験者

陸上無線技術士の伝搬問題で、自由空間伝搬損失の式を覚えたのに解けなくなるのはどこか。見通しが切れる、障害物で回折する、大地反射が乗るという3つの場面と、そこで式を切り替える判断をまとめます

自由空間伝搬損失の式は、覚えてしまえば使えます。32.45に周波数と距離の対数を足すだけで、電卓があれば答えが出ます。

それなのに過去問を開くと手が止まります。アンテナの高さが与えられている、途中に山がある、大地からの反射に触れている。式は覚えたのに、その式を使ってよい問題なのかが判断できません。

止まる場所は、だいたい3つに分かれます。

送受信点のあいだに何もない、という仮定

自由空間の式が置いている仮定は単純です。送信点と受信点のあいだに、地面も建物も山もない。電波は球面状に広がり、距離の2乗に反比例して電力密度が下がる。

この仮定が崩れる場面が、そのまま別の式に切り替わる場面になります。地面が近ければ反射が乗り、あいだに山があれば回折し、遠すぎれば地球の丸みで見通しが切れます。

問題文にアンテナの高さが書いてあるのは、たいてい親切ではなく必要だからです。高さが要るということは、地面か地平線が関係しているという合図になります。

見通しが切れる場面

まず地球の丸みです。アンテナの高さから見通せる距離には限りがあり、それを超えると直接波は届きません。

見通し距離には2つの式が出てきます。幾何学的な見通し距離は、高さの平方根の和に3.57を掛けたものです。電波の見通し距離は、同じ形で係数が4.12になります。

係数が違うのは、電波が大気中でわずかに下向きに曲がるからです。大気の屈折率は上空ほど小さく、電波はそれに沿って地表側へ曲がります。この効果を、地球の半径を4/3倍した仮想の球面上を直進する、と読み替えたのが等価地球半径係数K=4/3です。曲がるぶんだけ、幾何学的な地平線より遠くまで届きます。

試験でこの2つを取り違えると、答えは十数パーセントずれます。どちらを問われているかは、問題文が「電波の」と書いているかで決まります。

wavelaneの見通し距離画面のスクリーンショット。左に幾何学的見通し距離53.55キロメートルと係数3.57の式、右に電波見通し距離61.8キロメートルと係数4.12の式が並び、大気の屈折で8.25キロメートル遠くまで届くと表示されている
h₁=100m、h₂=25mのとき。係数の違いがそのまま8.25kmの差になる

障害物で回折する場面

見通し線上に山や建物の稜線があるとき、電波は完全に遮られるわけではなく、回り込んで届きます。この回り込みの量を決めるのがフレネルパラメータvです。

vは、障害物の見通し線からの突出量に、距離と波長から作った係数を掛けた値です。突出量が正なら遮蔽、負なら見通し線より下、つまり見通しは通っています。

ここに、覚えておくと問題の読み方が変わる値があります。vが0、つまり障害物の頂点がちょうど見通し線上にあるとき、回折損失は約6dBです。見通しは通っているのに、6dB落ちます。

見通しが確保できていれば自由空間として扱ってよい、という感覚でいると、この6dBを落とします。実際には障害物の頂点が見通し線から十分離れるまで、損失はゼロに近づきません。

回折損失の式は、vの範囲ごとに区分された近似式になっています。区分の切れ目を覚えるより、vを求めてからどの区分かを見る手順のほうが、計算間違いが減ります。

大地反射が乗る場面

3つ目は、地面で反射した波が受信点に届く場面です。直接波と反射波の2つが合成されるため、2波モデルとして扱います。

合成の結果は、2つの波の位相差で決まります。位相差は経路長の差から生じ、経路長の差はアンテナの高さと距離から決まります。距離を伸ばしていくと、強め合いと弱め合いが交互に現れ、ある距離から先は距離の4乗に反比例する領域に入ります。

自由空間の2乗と、2波モデルの4乗。この違いは、距離を2倍にしたときの減衰が6dBか12dBかの差になります。地上の移動通信を扱う問題で自由空間の感覚を持ち込むと、この倍の差でずれます。

3つの合図を先に読む

問題文を読む段階でやることは、式を思い出すことではなく、どの場面かを見分けることです。

アンテナの高さと距離だけが与えられていて、そのあいだに何も置かれていなければ自由空間です。高さと距離から見通せるかを問われていれば見通し距離で、係数は「電波の」と書いてあるかで選びます。途中に山や建物の高さが与えられていれば回折で、まずvを求めます。大地反射や地上高が強調されていれば2波モデルです。

自由空間の式が使えなくなる3つの場面を断面図で並べた図。地球の丸みで見通しが切れる場面、障害物の頂点が見通し線にかかる回折の場面、大地反射が加わる2波モデルの場面を示している
どの式を使うかは、問題文に与えられた幾何で決まる

式そのものは参考書に載っています。どれを使うかは、問題文に与えられた幾何を読む判断のほうで、式の暗記では埋まりません。

案内役の女性がホワイトボードの前でマーカーを持って立っているバナー。「その問題、自由空間の式で解けますか」「見通しと回折と大地反射で式が変わる」というコピーが入っている

動かして確かめる

wavelaneは、これらの計算をスライダーで動かしながら確かめる学習ツールです。周波数や距離、アンテナ高、障害物の突出量を動かすと、断面図と数値が同時に変わります。

vを0のあたりで前後させて損失が6dB付近から動く様子を見ると、見通しの有無と損失の関係が数字で残ります。距離を2倍ずつ動かして、自由空間で6dB、2波モデルの遠方で12dB落ちることを目で確かめる使い方もできます。

計算練習では、値を変えた問題が繰り返し出ます。無料で解けるのはカテゴリごとに1パターンですが、式を選ぶ判断のほうを鍛えたい場合は、こちらが向いています。

過去問に戻る

手が止まった問題をもう一度開いて、与えられている値だけを書き出してみてください。高さがあるか、障害物の寸法があるか、地上高が強調されているか。

式を選び終えたあとの計算は、たいてい数分で終わります。時間がかかっていたのは計算ではなく、その手前の判断のほうでした。

自由空間の式そのものの成り立ちは、「自由空間伝搬損失」にまとめてあります。32.45という定数がどこから来たのかが曖昧なままなら、先にそちらを読んでおくと、この記事の3つの場面も切り分けやすくなります。

よくある質問

自由空間伝搬損失の式だけでは解けない問題があるのはなぜですか
自由空間は、送受信点のあいだに地面も障害物もないという仮定だからです。試験で問われる状況の多くは、見通しが切れている、障害物がある、大地反射が乗るのいずれかで、それぞれ別の式に切り替わります。切り替えの判断は問題文の幾何で決まります。
見通し距離の3.57と4.12はどちらを使いますか
幾何学的な見通し距離が3.57、電波の見通し距離が4.12です。電波は大気の屈折でわずかに下向きに曲がるため、幾何学的な地平線より遠くまで届きます。等価地球半径係数K=4/3を使った換算がこの係数の差にあたります。
障害物が見通し線ぎりぎりなら損失はゼロですか
ゼロにはなりません。フレネルパラメータvが0、つまり障害物の頂点が見通し線上にある状態でも、回折損失は約6dBです。見通しが通っているかどうかと、電波が減らずに届くかどうかは別の話です。
wavelaneは無料で使えますか
自由空間と見通し距離は無料で使えます。計算練習も無料ですが、解けるのはカテゴリごとに1パターンまでです。回折、2波モデル、アンテナ、VSWR、電界強度、導波管、電離層、スミスチャート、雑音、指向性、計算模試は有料です。料金と最新の収録範囲はアプリ内の料金ページで確認してください。

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